TUNA SCOPE

REPORT

養殖本マグロのおいしさを、進化を遂げたAIが証明。「AI本まぐろ 鷹島」販売

ISSUED : 2023.3.15

「天然」と「養殖」。
普段からスーパーやお寿司屋さんなどで目にする、マグロの出自を表すこの標示。なんとなく、天然モノの方が新鮮で美味しそう……。
そんなイメージのもと、店頭に並ぶ天然と養殖の本マグロの間には、実に約10倍もの価格差がつくこともあるそうです。
でも、ふと水産物以外のことを考えると、野菜や畜産物は、そのほとんどがいわば「養殖」モノ。実際のところ、味や品質にはどんな違いがあるのでしょうか?
養殖本マグロのおいしさを解き明かすべく、双日ツナファーム鷹島の養殖場を舞台に、新しいAIモデルの開発・実証プロジェクトがスタートしました。

TUNA SCOPEのAI技術にさらなる進化。脂を見極め、生本鮪の目利きに対応

これまで、キハダやメバチマグロの目利きをマスターし、国内外の様々な現場に導入されてきたTUNA SCOPE。
次に目指したのは「本鮪」の目利きでした。
キハダやメバチといった脂の比較的少ないマグロと異なり、赤身の質だけでなく、脂のノリによって大きく価値が変わってくる本鮪。
異なる二つの軸で品質を評価するのは、目利きを長年こなしてきたプロにとっても至難の技であるといわれます。
また、急速冷凍されたマグロと異なり、生のマグロの尾の断面には凹凸が生まれ、わずかな差により断面の見え方も変わってきます。
これらの課題を乗り越えた新しいAIモデルを開発するためには、膨大な量の教師データが必要になってきます。

そこで目をつけたのが、日本最大の水産卸売市場である豊洲市場。
ここでは、希少性の高い本マグロが、一流の仲買人の目利きを経て、日々取引されています。
私たちは、ここ豊洲の仲買人の方々の協力を受け、毎日市場に並ぶ本鮪の尾の断面画像と職人の目利き結果を、リアルタイムでAIの教師データとして送信・収集し続ける仕組みを構築しました。

およそ二年間のデータ収集のプロセスを経て、試行錯誤しながら実現したのは「脂×赤身」の二軸によるAI品質判定アルゴリズムでした。

開発、「本鮪対応」TUNA SCOPE。鷹島の養殖ファームに導入。

私たちは2023年3月、この新しいTUNA SCOPEのAIモデルを、長崎県・鷹島にある双日鷹島ツナファームの養殖場に導入する取り組みを開始。
養殖場で育った本鮪は、天然モノとちがい、給餌の量やタイミング、水温などといった生育条件が、長年のノウハウをもとに厳格に管理されています。
一本ずつ水揚げして締めるため、品質や鮮度のバラツキがほとんどなく、年間を通して安定して美味しいマグロの供給が可能だといいます。

この養殖マグロの加工・出荷のプロセスに、TUNA SCOPEによるAI品質判定を導入。
養殖マグロの安定した品質のなかでも、特に脂・赤身ともに一級品として判定された本マグロにのみ、「AI本まぐろ」の称号が与えられました。

その行き先は、東京・荻窪駅に構える大型スーパー「東進水産 荻窪総本店」。
養殖の本マグロのおいしさを最後に判定してもらうのは、マグロの味に一際厳しい、東京の生活者です。

養殖のおいしさをAIで証明?東京で販売した「AI本まぐろ」その評判は。

なんとなく「天然」の方が美味しそう――。
そんな印象を持たれがちな養殖マグロ。AIテクノロジーに裏付けられた高品質な養殖マグロ「AI本まぐろ 鷹島」に、訪れた生活者の反応はどのようなものだったのでしょうか?

ガラス張りの調理場で行われた、AI本まぐろの解体ショー。
いつになく多くのお客さんが集まります。人が育て、AIが見極めた、世界初の本まぐろ。興味を惹く触れ込みに、売り場は大きな賑わいをみせました。

購入者に実施したアンケートでは、回答者の94%が「一般的なまぐろと比べ、食べてみたいと思った。」96%が「AIによる品質判定に今後も期待したい。」と回答。
さらに、食後の方を対象にしたアンケートでは、「AIの時代が到来した、と感じざるを得ない美味さだった。テクノロジーの進化を感じる。」と、TUNA SCOPEの技術に対する驚きの声や、「半信半疑だったが、味に感激。本マグロは高価だが、判断基準が無く、食べてから後悔することもあった。これからはAIの認証マークで判断できそうで楽しみです。」と、AIの確かな目利きに信頼を寄せる声が上がりました。

養殖マグロが、テクノロジーの力でもっと世の中に受け容れられるようになった未来。
それは、不漁などの環境要因に依らずに、美味しいマグロを誰もが安価で食べられる、そんな世の中です。
また、このプロジェクトを通じて開発された生マグロ対応のAIは、今後もさらなる改良を続け、開発途上国などにおけるマグロ取引の現場にも役立てられていくことが期待されています。様々な社会課題と向き合いながら、AIの進化は、今後も留まることなく続いていきます。

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