「来年もこの調子では、大間の一本釣り漁師は全員廃業するしかない。」 親子代々、大間で一本釣り漁を営んできた南さん。その口からこぼれた第一声は、近年稀にみるマグロ漁の深刻な不漁を語る言葉でした。「こんなに獲れないのは、今から30年以上前、青函トンネルが建設された年以来かもしれない。」
温暖化による水温上昇によって、マグロの餌となるイカが激減してしまったことが原因の一つだと言われていますが、それだけではない、と漁師の方々は続けます。 考えられるもう一つの原因は、漁獲のシーズンを考慮せず、産卵期のマグロや稚魚までを総獲りしてしまう漁のやり方が、日本近海でいまだに横行していること。「大間の一本釣り漁師が年間で獲る量のマグロを大型船は、たった1日で獲ってしまう。」
量のみを追求したやり方で漁獲されたマグロは、網の中で長い時間暴れ回り、体温の急上昇で身にヤケが生じたり、互いに傷つけ合ってダメージを負ったりした状態で揚がるため、その品質は決して良くないそうです。その一方で、大間の伝統的な漁法である「一本釣り」は、テグス一本でマグロを一匹ずつ釣り上げ、船上で締めていくやり方。「マグロ一匹一匹を丁寧に扱うから、その質もずっと良く保たれる。品質を保つためには、締め方が非常に重要です。」
「それでも最近は、マグロが市場に出回る量が減ってきたばかりに、どんな質のマグロでもそこそこの値がついてしまう。」これまで仲買人として、日々、大間のマグロを見定めてきた新田さんが続けます。乱獲が供給量の低下を招き、その結果、品質の良し悪しではなく、多く量を獲った者勝ちの構図が続いてしまう。その悪循環が、大間の漁師の立場をより危うくしてしまっていることが課題だと、彼らは話します。